2022.10.14 Friday

【福岡店】柴田七美展 開催いたしました。そして東京店開催へ!

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    画家、柴田七美の新たな試み

     

    みぞえ画廊福岡店にて、柴田七美展「劇中劇」が開催されました。

    故郷福岡では2年ぶり、3回目の個展となる本展では、大作をはじめ、24点の作品を展示させていただきました。

     

     

    前回の個展では、過去に見た演劇や映画のワンシーン、本の挿絵などの記憶の断片を寄せつめ、パーツを組み合わせて作り上げた架空の場面をモチーフとしあえて形骸化させ、形への意識を強くした表現を見せていました。その手法によって、「なにも描かない」ことで絵画を成立させ、絵の具の物質としての面白さを最大限に魅せることを追求されていました。

     

    ※前回の個展の様子はこちら↓

    http://blog.mizoe-gallery.com/?day=20200916

     

    しかし、本展では、その手法は一切使われていません。

     

    劇と絵画が共通して持つ「入れ子構造」

     

    柴田七美さんは、絵画の制作と並行して、10年ほど前から物語をかき始めており、自身と向き合って描き上げたそれは戦争の物語だったそうです。物語が完成する頃、世界情勢は大きく揺れ動いており、「何かを描く」ことの必要性を痛感したと言います。そうした中で、「何かを描きたい」という欲求と、これまでの表現が結びついて行きました。

    元より近代史に関心が高かったこともあり、本展では史実やそれを元にした演劇などから想像を膨らませて描かれています。前回に引き続き、人物の絵がメインとなっていますが、風景や花を描いたものもあります。それぞれに、イメージの元となった過去の出来事が存在します。それらを観劇、あるいは調査し、想像した情景を描くことは、現実を映した記録や物語から画家が掬い取った幻想を描く行為です。絵画というもの自体が虚構である側面もあるため、丁度、劇の中で演じられる劇のように、虚構の中に虚構が展開されます。そのため、今回はモチーフを形骸化させる必要が無かったということになります。

     

    2点の大作はどちらも「群衆」を描いたもの

     

    《 暴動 》油彩 162×260cm 2022年

     

    本展のメインを飾る大作。

    「いつの時代の様子だろう?」

    「何が起こっているんだろう?」

     

     

    あえて時代や人物像を特定させない描き方が選ばれていることが分かってくると、鑑賞者の疑問を軽やかにかわしているようにも感じられます。史実を象徴するように存在するあらゆる群衆画は、史実であることから解き放たれたときに絵画としてどのような鑑賞体験をもたらすのでしょうか。

     

    《 解体 》油彩 145.5×224cm 2022年

     

    もう一つの大作。

    群衆とは、時に革命にも発展するうねりを作り出すことができます。今回の群衆画2点には、そういった現象への興味関心も強く表れています。

     

     

    本館でも一部の壁に、柴田七美展作品を展示いたしました。

    背景に幕が描かれています。幕は柴田七美さんの作品で以前から描かれることがありましたが、本展では、演劇や演劇の脚本を元に想像したシーンを絵画化したものに描きこまれることが多いようです。

     

     

    在廊中は、一つ一つの作品についての質問に丁寧に答える姿が印象的でした。

     

     

    さて現在はみぞえ画廊東京店にて、巡回開催中です。福岡店で展示していなかった作品もございます。

    どうぞ足をお運びください。

     

    柴田七美展「劇中劇」
    2022年 10月15日(土)〜 10月30日(日)
    [作家在廊日]10月15日,16日,23日,24日,29日,30日
    会期中無休 10:00-18:00
    会場 みぞえ画廊東京店(大田区田園調布3-19-16)

     

    JUGEMテーマ:美術鑑賞

    2018.10.06 Saturday

    【東京店】東京店にて10月6日から − 生誕110年 − 野田英夫展 がスタートします。

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      JUGEMテーマ:展覧会

       

      みぞえ画廊のコンセプト:「流行や時代に左右されない、上質な作品、作家を提供」をもとにセレクトされた取扱作家から毎週一作家をご紹介します。

       

      今回は、第11回でご紹介した野田英夫(1908年〜1939年)になります。東京店にて10月6日から − 生誕110年 − 野田英夫展 がスタートします。

       

      東京店内展示風景 ドローイングを中心とした貴重な作品27点を展示   

       

       

       

       

       

      野田英夫については第11回でくわしく記していますので、画廊に作品を展示して、また、この展覧会のために年譜を編集制作したなかで、感じたことを書きます。

      年譜の編集作業は一般的なケースでは画業80年ほどの長きにわたるその画家の人生を俯瞰することができますが、野田英夫の場合は、悲しいほど短いものです。まさに「夭折の画家」。ただし、その1年1年を細かくみていくと濃密な時間を疾走していったことがわかります。

       

      いくつかの重要な出会いがあります。1926年18歳でピードモント・ハイスクールに入学し、美術クラブに所属。そこで美術学部教師のリリアン・ゾネシャイン先生に出会い、油彩画を学びます。野田の才能を感じとったのか野田が卒業後もこの先生は応援してくれました。それが1937年(29歳)の母校ピードモント・ハイスクールでの壁画制作です。貧しかった野田のために200ドル(現在の100万円程度に相当)で依頼、1ヶ月がかりで『学園生活』を完成させました。(この壁画は、その後、1979年ゆかりのある熊本県立美術館に収蔵され、その売買代金は母校ピードモント・ハイスクールで野田基金となったそうです)。

       

      カリフォルニア・ファイン・アーツに進学した23歳の時、画家のディエゴ・リベラに出会い、壁画について学びます。野田にとって「壁画」は重要なキーワードとなっていきます。ニューヨークから教えに来たアーノルド・ブランチ教授との出会いも重要です。このブランチの勧めと援助もあり、その後、ニューヨークに行き、ブランチが教えるアート・ステューデント・リーグの夏期講座を受講します。ニューヨークでは、多くの知識人、アーティストと交流することになり、活動の幅が大きくなります。1933年(25歳)の時、ロックフェラー・センターで大壁画を制作中のリベラと再会し、ここで、ベン・シャーン、ジャクソン・ポロックらと助手を務め、リベラから「壁画的構図の造形法とその思想」を学びます。野田の代表的な油彩作品(活動期間が短いので点数が少ない)は、今日、東京国立近代美術館や横浜美術館、熊本県立美術館に収蔵されていますが、野田作品の真骨頂は、まさにこの「壁画的構図」の作品といえると感じました。いくつもの要素が画面上に描かれた非常に質の高い作品です。

       

      これは、本展 展示作品の 『壁画エスキース』 

       

      このように、野田にとって「壁画」は重要な要素となり、この後、いくつか独自の壁画制作を展開します。

      ・1934年(26歳)シビックセンター(ニューヨーク)内に壁画『移民』を制作

      ・1936年(28歳)西銀座7丁目のバー「コットン・クラブ」に壁画を制作(戦災で焼失)

      ・1936年(28歳)赤坂2丁目の飲食店「フロリダ・キッチン」にテンペラ壁画を制作(戦災で焼失)

       

      戦災で焼失していなければ、今でも都内で野田の壁画を実見できたかもしれません。いや、壁画という媒体である以上、建物と一緒に消滅してゆく運命のものがほとんどであるのも事実です。そういった意味では、「キャンバスの油彩作品」は、美術館に収蔵されれば半永久的に保存されていくだろうと思われますので、感慨深いものがあります。

       

      長くなりましたが、本展では、作品数の少ない夭折の画家、野田英夫の貴重な作品群27点を生誕110年記念のこの機会に、ご紹介するものです。ぜひ、野田英夫年譜を細かくご覧になり、30年という短い画業を振り返りながら、作品をご高覧いただけましたら幸いです。(ym)

       

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