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2017.12.13 Wednesday

【東京店】銀杏の会 〜贈り物としての作品展〜

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    JUGEMテーマ:展覧会

     

    今年で5回目となる銀杏の会が始まりました。

     

    初日、講演会の冒頭で渋谷和良先生のご挨拶がありました。

     

    40年前に亡くなられた駒井哲郎先生のご自宅で毎年偲ぶ会があり、若い渋谷先生は、

    皿洗いをしながら作家の方々の面白い話を聞いていた記憶があると話されました。

    駒井先生が亡くなられたのは11月10日、いちょうが黄色く色づく季節だったので、

    銀杏忌と名付けられ、その後多くの版画、美術を愛好する方のサロンにしていこうと

    そうした思いから発展して銀杏の会となっています。

     

    今回の展覧会は≪贈り物としての作品展≫と題されています。

    デユーラー研究者である青山愛香氏(独協大学教授)が、駒井先生へのオマージュとして

    デューラーの「メランコリア1」に関する講演をされました。

     

    アルブレヒト・デユーラーは15世紀末〜16世紀初め、ドイツ・ルネッサンス期に活躍した

    作家で、彼は代表作を携行して旅に出ました。

    銅版画の最高傑作といわれる「メランコリア1」も旅に携行した作品の一つです。

     

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     「メランコリア1」 

     

    これはニードルの点で描写された非常に細密な版画ですが、難解で、主題がはっきりしていない

    寓意画です。寓意画とは、具体的モチーフを描きながら、アンサンブルになった時に全く違った

    概念を持つものです。この作品を見ると、人物は肘をついていて翼を持っていますが、天使とは

    考えにくく、羽は概念を擬人化したものです。右手にコンパスを持ち、足元に大工道具が散らばり、

    上部には砂時計、秤といった計測器具がならんでいます。

     

    古代ギリシャから伝統的に、人間の気質としの憂鬱質を表すために、肘をつくというポーズがあり、

    デューラーはそれを取り入れています。古代ギリシャの医師たちは、人間には四つの気質「多血質、

    胆汁質、粘液質、憂鬱質」があると考えていました。4つのバランスが良いと健康で、憂鬱質になると

    人間は怠惰で動けなくなると考えられました。

    デューラーは、メランコリーを、新しい視点で捉え描きました。

    顔は黒く、肘をつき、翼を持つ、憂鬱質の擬人像を、この人物は体現しています。

     

    レオナルド・ダ・ヴィンチには、芸術は科学だという時代感があり、当時の芸術家は最高の学問を

    修める科学者としての存在だと認識されていました。一方デューラーは、天才という概念を出します。

    芸術家は職人ではなく絵描きとして天から与えられた才能、天賦があると考え、自身は天才だと

    自負します。

     

    しかし、天才であっても天体について理解できない、知の限界を悟ったのです。

    天才とその絶望感を二重写しにして表した精神的自画像が、この「メランコリア1」であったと

    考えられます。

     

    この作品は『寓意を使って思考する絵画』として、キリスト教絵画にはなかった新しいジャンルを、

    最高度の版画の技法で生み出した最高傑作の銅版画だと言えるでしょう。

     

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    こうして、講演を締めくくられました。

     

    デューラーとレオナルド・ダ・ヴィンチの作品を比較しながらの解説に、聴講された方々は

    「大学の講義を聴いているように面白かった。」と感想をもらされました。

     

     

    講演の後は、

    歌手リオさんのヴォーカルと小泉清人さんのギター、大角一飛さんのコントラバスの演奏による

    ボサノヴァコンサートがありました。

    繊細で心地よく響く歌声に、師走のひと時を忘れ、40数名の方々がしっとりと聴き入っておられました。

     

     

     

    クリスマスからお正月にかけて、皆様は親しい方々にプレゼントをなさいますね。

    受け取られた方に優しい心が伝わる、そんな小品が並んでいます。

    是非ご覧ください!

     

     

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