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2019.02.16 Saturday

【東京店】取扱作家から毎週一作家1点ずつご紹介。第18回は、香月泰男(1911年10月25日 - 1974年3月8日)

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    JUGEMテーマ:美術鑑賞

     みぞえ画廊のコンセプト:「流行や時代に左右されない、上質な作品、作家を提供」をもとに取扱作家から毎週一作家、1点ご紹介します。

    第18回は、香月泰男19111025 - 19743月8日)

     

     

     『シベリア・シリーズ 』 4枚組リトグラフ 1969年 Ed.50

     

    東京美術学校を卒業した香月泰男は、下関高等女学校で美術を教えていたところ、1943年召集され満州に出征。2年後大陸で終戦を迎えますが、シベリアに抑留されました。冬は−40℃にもなるシベリア・クラスノヤルスク地区セーヤ収容所でおよそ2年間、森林伐採などの過酷な強制労働に従事して、1947年5月帰還します。

     

    帰還後早々に、後に『シベリア・シリーズ』と呼ばれる油彩画を描き、翌年も描きますが、その後シリーズは8年間中断します。1956年秋から半年間ヨーロッパ旅行に出発し、フランス、スペイン、イタリア等を巡る中で、中世の彫刻や絵画、またダ・ヴィンチなどによるルネサンス期のモノクロに近い絵画に出会います。中世の彫刻にある陰影の強い顔は、『シベリア・シリーズ』独特の「顔」の表現を生み出すきっかけになりました。収穫の多かったこのヨーロッパ旅行後、香月は本格的に『シベリア・シリーズ』に取り組みます。

    50年代後半になると、香月のパレットから徐々に明るい色が消えていき、黒や灰色、黄土色が画面を支配するようになっていきます。50年代末には、後年の香月作品のトレードマークといえる、黒と黄土色を基調とした作風が確立され、1959年、堰を切ったかのように、『シベリア・シリーズ』3作品が一挙に発表されました。

     

    「シベリアのことを思い出したくなどない。絵にしようと思って絵にするのではなく、自然に浮かびあがってくる。描くたびまだまだシベリアを語りつくしていないと感じる。シベリアで真に絵を描くことを学んだ。モチーフが無限に自分のなかから湧いてくる」

    抑留者の数だけ違うシベリアがあります。『シベリア・シリーズ』が今でも人々の心を惹きつけるのは、政治的な主義主張を下敷きにしたものではなく、あくまでも一人の画家の個人的な想いを描いたものであり、それが普遍性を持つもの、家族への愛情、運命に翻弄されることに対する怒り、悲しみ、諦め、そして希望を表現しているからではないでしょうか。

     

    油彩シベリア・シリーズは、出征、終戦、シベリアへの輸送、抑留生活、復員と、香月が実際に体験した順番の通りには描かれていません。シリーズとは呼ばれるものの、57点の油彩画は初めから体系的に描かれたのではなく、シベリアでのランダムな記憶が結実した作品群といえます。

     

    みぞえ画廊には1969年に制作された『シベリア・シリーズ』雪・窓」「運ぶ人」「雪」「避難民」と題した4枚組リトグラフ(サイン入り、限定50部)がございます。是非ご高覧賜りたくご案内申し上げます。

    https://mizoe-gallery.com/products/list?category_id=250 

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