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2019.03.09 Saturday

狂気のリアリズム、生涯をかけた異端の画家「吉村芳生展ー新聞と自画像ー」3月17日(日)まで開催中

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    東京ステーションギャラリーから始まり現在広島で開催中の大規模な回顧展が注目され、テレビ番組「美の巨人たち」でも特集された、吉村芳生先生の個展が、みぞえ画廊福岡店にて開催中です。福岡での個展は、2010年にみぞえ画廊で開催して以来9年ぶりとなります。

    2013年に亡くなられた後も、各地の美術館で個展が開催されており、再評価が進んでいます。

     

     

     

    ずらりと並んだ顔は、すべて吉村芳生の自画像です。自画像というテーマを生涯にわたって描き続け、世界一自画像を描いたのではと評されるほど。

     

    吉村芳生は、21歳頃、広告代理店にデザイナーとして勤務していましたが、高度経済成長期の広告業は多忙を極め、体調を崩し退職します。画家になる志を持ち続けていた氏は、創形美術学校に入学し版画を学びました。

    26歳頃にみたアメリカ美術の展覧会で衝撃を受け、なかでもウォーホルの作品に影響を受けたと後のインタビューで語られています。キャンベルスープ缶や、誰でも知っているマリリンモンローの顔などのありふれたものが、版画の技術で繰り返して描かれている作品は有名ですね。その後、ありふれた風景や何でもない金網をモチーフに選んでいることとリンクしているのかもしれません。新聞をモチーフに選んだのも同じころでした。画集には、「ふと目に入ったのがきっかけ」とあります。その後1979年11月8日から21日間分のジャパンタイムズの一面を2年がかりで描いた作品「ドローイング新聞」や、一年間毎日の自分の顔を描き続けた作品「365日の自画像(1988年7月24日〜1989年7月23日)」が、制作されました。これらの作品は、今見るべきアーティストのみを展示する「六本木クロッシング2017」という展覧会に推挙され、地方での評価にとどまっていた画家を一躍スターダムに押し上げます。

     

    新聞を読むことと鏡を見ることは毎朝欠かせない行為

    毎日消費され消えゆく宿命を持つ新聞紙を、社会を映す鏡と位置付けており、そこに移りこむ自身の顔を描いていくことは、2000年代からのライフワークとなりました。

     

    現在、みぞえ画廊福岡店に展示中の、「新聞と自画像 in Paris」シリーズは、2011年12月から一年間パリに留学していた時に、現地の新聞に自画像を描いた作品です。季節は冬、鬱屈として部屋に閉じこもっていることも多く、そうして一日10時間、5、6枚は自画像を描き続けていたそうです。このシリーズは、鏡を見て描かれており、家族や友人のいない留学先での制作で、自分と向き合う苦しい状況を思わせる表情にも見えます。

    自画像なんてどこで描いても同じと思うかもしれないが、パリにはパリでしか描けない自画像があるのです。

     

    その他、自画像をシルクスクリーンの技法で新聞印刷した作品を展示しています。

     

     

    この作品のエディションは、通常の版画と逆になっています。通常、版画は同じ絵が枚数限定で作られますが、この作品で版画紙として使われる新聞紙は、毎日、社会を映す鏡としてこの世に生まれます。そのため、版画でありながら、同じ作品が二つとなく、永久に増え続けるという意味が込められています。

     

    35歳頃、上京先から地元・山口県徳地に移り住み、自然の鮮やかさに囲まれるうちに始まったという、色鉛筆で花を描いた作品も3点、展示しています。これらの作品は、すべて色鉛筆によって、驚くべき手法で描かれています。

     

     

     

    作品に描くための題材を写真に収め、それに方眼紙のように小さなマス目状に線を引きます。大きなキャンバスにも対応するようにマス目を引き、そのマス目を、画家がコピー機になったかのように、一つずつ描きこみ塗りつぶしていきます。全てのマス目が埋まるころには、作品が完成しているというのです。その手法は機械的で感情を排していますが、吉村先生はその行為そのものを重視していました。在学中から亡くなるまでの画業は、描きうつし繰り返す・継続するという制作スタイルに貫かれています。それによって立ち現れてくるものこそが、自分にしかできない芸術だと、自身を見つめ続ける中で確信していったのではないでしょうか。

     

    新聞と自画像は、現実の日々。花の世界は未知なる浄土。私は「この世」と「あの世」を鉛筆で描いているのです。鉛筆をカッターナイフで削り心を尖らせていく度に、鉛筆の命が削られていき、その命が紙に塗り込まれていくのです。

     

     

    3月17日まで開催しております。ぜひ足をお運びください。

    スタッフ

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