今回は学芸員を目指す学生さんがインターンシップに来てくださいました。ぜひご覧ください。
ーインターンシップ体験記ー
はじめに
今回、みぞえ画廊さんのインターンシップに参加させていただきました。大学生のSと申します。
私は大学で学芸員資格取得を目指しているので、美術館と画廊の、似て非なる部分を探しながら5日間勉強させて頂きたいと思います。
・2月10日 1日目
翌日から開催される片山雅史展の展示作業を行いました。作品の展示はもちろん美術館でも行われることなので、共通するお仕事を体験でき、嬉しかったです。
しかしながら、壁に釘を打ち付けたり、作品を運んだり、大判の作品を持ち上げるたびに頭の中で「展示は力仕事だ…」とよぎりました。
1日目にセットした懸垂幕
・2月11日 2日目
片山雅史展が始まり、初日は片山先生が丸一日在廊されていました。来廊者の方と先生がお話しされているのを見て、「作者と鑑賞者が対話できるのは画廊ならではだ。」と気づきました。作品を見た鑑賞者がどんな反応をしているのかを見ることも、どんなことを思ったのかを聞くことも、作者にとって面白く刺激的な経験になるのだと思います。
私も自分の作品を展示して、人に見てもらい、どんなレスポンスがもらえるのかを知りたいと思いました。
・2月14日 3日目
この日は展示作品の撮影をしました。授業で使って以来、久しぶりに一眼レフカメラを使いました。資料用の写真になるので、色味に気を付けて撮影しなければなりません。ですが、あるお役立ちアイテムのおかげで簡単に撮ることができました。その名もグレーカード。一見何の変哲もない灰色の紙ですが、なんでも特殊な方法で印刷されたとても純粋な灰色なのだとか。このカードと一緒に撮ると後で行う色味の調整が楽になるそうです。授業では白い紙を使っていましたが、それ専用の紙があるとは驚きでした。同時にカメラの奥深さの片りんを感じることになりました。
グレーカードのパッケージ
・2月27日 4日目
前回の日程からしばらく間が空きました。この日は片山先生の展覧会が前日に終了していたので、片付け・梱包作業に移りました。しかし初日に展示した際と同様、梱包の作業も体力勝負でした。床に梱包材を広げ、それぞれの作品サイズに合わせてカット。画廊で保管する作品や、片山先生にお返しする作品。そして会期中に売約された作品も多くありました。売約された作品はお客さまのもとへ運ぶため、特に丁寧に包まなければならないなと思いました。
そのほかにも、壁についた汚れを取ったり、釘で空いた穴を埋めたり、地味でありながらも次に展示するときのための大切な作業も行いました。これは美術館でも同じことで、壁などの空間全体を綺麗に保つことは、来館者の視点では気づくことがなかなか難しいことですが、作品を邪魔しないためには大事なことなのだと感じました。
・2月28日 5日目
いよいよ最後の日がやってきました。前日に引き続き、片付けと梱包の作業を行いました。
インターン期間は5日間という短い間でしたが、展覧会開催前日の作業から開催中の様子、そして終了後の片付けまでを体験することができ、非常に内容の濃いインターンとなりました。
この5日間を通して、みぞえ画廊で働かれている方々とのお話はもちろん、作家である片山先生のお話や、来廊者の方のお話も聞くことができ、インターン開始前にイメージしていたよりも多くの人と接することが出来ました。
何より、当初は2月上旬に5日間連続で参加させていただく予定を、快く調整していただいたことに深く感謝しています。風邪で最初の3日間を休んでしまい、回復したときには「あと2日しか残っていない」と、とても無念に思っていたので、3日間の日程を別日に振り替えていただいて、本当に嬉しかったです。
おわりに
「画廊と美術館の似て非なる部分を探す」というテーマを念頭に5日間を過ごしましたが、展示や片付けの作業は、基本的な部分であり、そこまで大きく変わらないのだと思います。しかし展覧会については「作者と鑑賞者の対話ができる」という点が画廊ならではの要素であり、とても魅力的な要素ではないのでしょうか。
今回のインターンを通して、これからは美術館だけでなく、県内にたくさん存在する画廊・ギャラリーに行ってみようと思いました。そこで感じた雰囲気や展示方法を知識として役立てたいです。もちろん、みぞえ画廊さんにも必ず伺います。
この度はインターンが始まる前からご迷惑をお掛けしたにも関わらず、温かく迎えてくださりありがとうございました。お世話になりました。
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自分でテーマを掲げて取り組む真摯な姿勢を見せてくださった5日間でしたね。画廊ならではの魅力を自ら見つけていただき、スタッフとしても誇らしく思います!今回の経験がよりよい未来に結びつきますように祈っております。ありがとうございました!
スタッフ
]]>今回は、他分野をご専門に学ばれている学生さんの体験記となります。どうぞご覧ください。
インターンシップ体験記
はじめに、絵画を見ることが好きなだけで専門的なことはよく分かっていない私をインターンシップに受け入れて下さり、本当にありがとうございました。
インターンシップ5日間で知ることができたこと、興味深いと思ったこと等を書いていきます。
✓インターン1日目(2/24)
朝から雨が降っていて無事にたどり着けるか不安でしたが、近くにいらっしゃった警察官の方に教えてもらいたどり着くことができました。会長さんを始め、スタッフの方々が優しく出迎えてくださいました。店内は、本館は白を基調とした凹凸のある空間になっていて、すぐ横には個展が開催されている新館もありました。
1日目は、お客様にお出しするお茶やコーヒーの淹れ方を教わりました。家では家族以外に出したことがなかったのですが、優しくスタッフの方が教えて下さったので不器用な私でも出来ました。
また、お恥ずかしながら好きな画家であるミュシャ以外詳しくない私に、スタッフの方が常設されている絵画を交えて色々な画家さんを紹介してくださいました。その中でも私が特に気になった作品を紹介したいと思います。
◎パブロ・ピカソ「休憩するサルタンバンク」
この作品は他の常設されている作品よりも少し小さい作品ですが、大きさに反して存在感がとてつもなく感じられました。小太りのサルタンバンク(大道芸人)が椅子に座り題名の通り休憩しているだけなのですが、その時の顔からどことなく哀愁が感じられ、個人的にとても好きな作品の一つになりました。
◎マルク・シャガール「アラビアンナイトよりPL3」
この作品は青が基調となっていますが、その中で一匹の鳥がオレンジ色となっており、色の対比が美しいです。
◎中村 宏太「Shooting star」
この方は“9.11の事件”から弾痕を用いた作品を制作していると聞き、改めてこの作品を鑑賞すると被害の重さや事件の悲惨さが頭に浮かびました。
◎奥山 民枝「春の群波」
一目見ただけで思わず『綺麗、、、』と言葉を失うほど優しい色で描かれているこの作品は、春特有の淡い雰囲気を感じられ胸が温かくなりました。
◎野見山 暁治「予告にみちた季節」
この方は私が存じ上げている画家の方の一人で、他にも戦争で亡くなった戦没画学生の絵を集めて展示していたと聞いて、その方達の生きていた証を残した素晴らしい方だと思いました。
また、片山雅史先生の個展「片山雅史展 いのちのかたち」が開催されており、実際に見学させていただきました。
作品のシリーズの一つである「皮膜」は、内側の世界と外側の世界の境界である作品を膜と例えたもので、そこに出入りする光を感じさせるかのようです。先生は描かれた像を見ることによって、五感で見る以上の他の知覚を呼び覚ますことを大切にしており、どの作品も壮大で、圧巻で、個人的には今まであまり注意深く見ることがなかった植物の一面を知ることができたように思われ、とても貴重なものであったと感じました。
✓インターン2日目(2/25)
2日目は、初日に教えていただいたブログ作成に取り組みました。私はブログを書くということが初めてだったので、不安な気持ちで書いていますがいざ書き始めると書きたいことが多く、とても楽しみながら作成できました。休憩時間には、奥山民枝さんの画集を拝見し、絵の美しさに驚き、奥山さんの人柄を知ることができました。
また、今日は休日ということもありお客様が多く来廊されお茶出しやコーヒー淹れをさせてもらった上、初めて作品の写真撮影を手伝わせていただきました。白い手袋を付け、作品に自分の手が触れないよう注意しました。
✓インターン3日目(2/26)
3日目は片山先生の個展が最終日ということもあり、たくさんのお客様がご来廊されました。初めて接客のお手伝いをさせていただき、カップやスプーンの置き方等をご指導いただきながらお客さまへお飲み物をお出しすることが出来ました。初めてなのでとても緊張し、淹れたコーヒーやお茶がこぼれないかとても不安でしたが、お盆を置いて慎重にコップを置くことに気をつけながら遂行できました。
最後ということで、先生に私が気になっていた「群蝶図」についてお聞きすることができました。蝶は短命な命である生き物で、生と死を表しているということと、蝶を立体的に描くことでまるで本物の蝶が作品の中に存在しているように見える、ということを教えてくださいました。お時間いただき本当にありがとうございました。
✓インターン4日目(2/27)
4日目は片山先生の個展が終了したので、撤収のお手伝いをさせていただきました。売却済の作品等を二重で包んだり、一重で包んだりと初めての事ばかりでしたが、スタッフの方が丁寧に教えてくださったおかげで上手く包装できました。個人的に好きだった片山先生の群蝶図が売却されたと聞き、嬉しくもあり寂しくもありました。
また、今日はもうひと方のインターン生と一緒に作業することができ、良い刺激をもらうことができました。明日も一緒なので最後まで良いインターンにできたら良いなと思います。
✓インターン5日目(2/28、最終日)
今日はインターン最終日でした。4日目の続きをし一人で作品の梱包をさせていただき、とても緊張しながら、でも責任持ってできました。不器用ながらも綺麗にできたので安心しました。個人的な余談ですが、昨日からのインターンの方の推しが偶然にも私の推しと一緒ということで、休憩時間にたくさんお話しできとても嬉しかったです笑。
✓最後に
初めてインターンというものに参加し、最初は不安でしたがとても楽しく、スタッフの方が優しく教えてくださったり助言をいただけたりしたので最終日を迎えることができたと思います。これを機にもっと美術の世界を知りたいと共に、ここでできた経験を基に将来に活かして行きたいと思います。5日間、貴重な経験を本当にありがとうございました。
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インターンシップお疲れさまでした!美術とは全く関係のない分野の学者の方のお話で、アートで新しい発想を得ることで研究にも生かされることがあるそうです。素直で誠実なお人柄で、これからもご自身の専門分野を高めつつ、美術を愛するお気持ちを持ち続けてくださいね〜!ありがとうございました。
スタッフ
JUGEMテーマ:展覧会
JUGEMテーマ:展覧会
みぞえ画廊 福岡店では、新作50作品もの数々をご覧いただける「片山雅史展 いのちのかたち」を2月26日(日曜日)迄開催いたしております。福岡では2019年7月以来、3年半ぶりの個展です。
是非画廊にてご堪能ください。
まずはメイン会場の新館に入られますとひと際目を引く今年の新作に迎えられます。
「皮膜2023/向日葵」 パネルに紙・アクリル・顔料 2023年
画像ではなかなかサイズ感が伝わりづらいかと思いますが、270cm×270cmの大作です。
作品タイトルにある「皮膜」は、片山氏が描き続けているシリーズの一つ。
まるで「膜」で覆われているような作品は、見ていると五感だけでなく第六感を呼び起こされ、
作品の持つ世界観へ引き込まれていきます。
また、もう一つ重要な作品のテーマ「螺旋」を、向日葵の「種」が並んでいる様子で描いています。
向日葵の種は「フィボナッチ数列」で並んでいます。それは最もたくさん種を残せる並び方であり、
つまり最も多く子孫を残せる、ということ。
生命の根源の力強さが、この美しい螺旋に描かれています。
この作品の皮膜は瑞々しく輝く透明で、画面に施された立体的なドットが水滴を思い起こさせます。
水も生命にはなくてはならないもの。
シャンパンゴールドからピンクゴールドへグラデーションしている背景が、ドットを美しく光らせています。
(この中に花模様のドットがあるのがお分かりになりますか?)
また、今回の個展のDMのメインビジュアルとなった作品はこちら
「群蝶図/光の庭にーメメント・モリ」 パネルにキャンバス・紙・アクリル・顔料 2022年
黄金色の画面の中を、同じく黄金色の蝶が折り重なるようにして舞っている、105×300cmのこちらも大作です。
(一部をクローズアップ)
「メメント・モリ」とはラテン語で「死を想え」。
死があるからこそ、限られた生が美しく輝く。
それを再生と復活のシンボルである「蝶」が乱れ飛ぶ様子で幻想的に表現されています。
わざと溶け残させてある顔料が、蝶の鱗粉や花粉を思わせる演出も見事です。
そして展示は更に本館へと続きます。
本館での展示の様子
本館では小作品ながらも存在感たっぷりの優美な作品の数々をご覧いただけます。
皮膜 2023 / 向日葵 33.5×33.5 cm アクリル・顔料・キャンバス 2023年作
皮膜 2022 29.7×21cm アクリル・顔料・キャンバス 2022年作
皮膜 2022 29.7×21cm アクリル・顔料・キャンバス 2022年作
画廊に差し込む柔らかい自然光と共に初々しさを感じる新作です。
自然界において肉体と心、命のあるものと既に命途絶えたものはあらゆる相対性の狭間にたっています。
画家が表現する「皮膜」とは・・・作品の自体の物体の表面、また、みる側が感じ取るイマジネーションとの境界線のよう。「皮膜」シリーズをみてますと表面となるインパクトを放つモチーフは極めてシンプルでいながらも、作品の奥底には根深く潜在する言葉では表現しきれない不思議な知覚が目覚めてくるようです。
見る側の感覚は人それぞれ。
是非画廊にてお楽しみください。
皮膜 2023 / 向日葵 33.5×33.5cm アクリル・顔料・キャンバス 2023年作
皮膜 2023 / 向日葵 33.5×33.5cm アクリル・顔料・キャンバス 2023年作
海景 2022 (大53.5x86.5) (小53.5x46.5) アクリル・顔料 2022年作
旅情に誘われるような中国深圳の海辺をイメージした作品。柔らかい凪が安らぎを与えてくれるかのよう。
中国の深圳にございます5星ホテルにてこの作品のプリントレプリカが飾られております。
(一部をクローズアップ)
作品左下にはノスタルジックな小舟が描かれております。
HANA 2022 / 梅枝図 30×44cm アクリル・顔料 2022年作
「智慧」をテーマに制作依頼を受けた時の作品。
梅の残雪にも思える白い顔料での描写は、逆説的に梅本来の紅色を朧に思わせます。
花弁の一枚一枚はふっくらと立体的に表現されています。
(一部をクローズアップ)
梅のモチーフの背面は厳しい寒さにも耐え忍んだ木の根のようなどっしりとした質感。
作品全面の梅の陶器のような白く艶やかな質感とは対照的です。
HANA 2022 / 梅枝図 33×33cm アクリル・顔料 2022年作
HANA 2022 90×57cm アクリル・顔料・キャンバス 2022年作
中国の青島(チンタオ)の某ホテルにてこのシリーズの作品が飾られております。
画家は青島の青く輝く海を全面に表現。作品をみる角度や差し込む光によっては青い海が上品な紫にもみえてきます。
この作品も梅枝図に続き、優美な花びらは白く艶やかでまるで陶器のような質感を醸し出します。
画家片山ならではの表現の豊かさや奥行の幅を感じる作品のひとつです。
「片山雅史展 いのちのかたち」は2月26日(日曜日)迄の開催となります。
シリーズ「皮膜」、「HANA」、「郡蝶図」、「メメント・モリ」の他、今回ブログではご紹介しきれなかったシリーズ「水花開」、「蝶図」なども展示いたしております。
画家片山雅史が繰り広げる自然界の生命の営みをたたえる作品群を、画廊にて是非、たっぷりとご覧ください。
ご来廊を心よりお待ちいたしております。
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映像をご専門にされているとのことで、みぞえ画廊福岡店にて開催中の「片山雅史展 いのちのかたち」の会場を動画に収めていただきました。
この動画制作の舞台裏をフレッシュな文章でお届けいたします。
インターンシップ体験記
画廊のお仕事に興味が湧き、今回のインターンシップに参加させていただきました!
大学の方では映像を製作することを専攻しています。
作品を取り扱う業務というより、私はインスタグラムでの展示会を宣伝する動画の製作をお仕事にさせていただきました。
1日目
片山雅史展の展示会紹介ムービーを作成しました。会場全体の雰囲気が伝わるように制作したので、雰囲気を感じ取って、見ていただけると嬉しいです。
休日ということもあり、撮影をしている間もたくさんのお客様が来られます。緊張しながらも挨拶をしました。三脚を抱えたままで、すみません。片山先生を訪ねて来廊くださる方もおり、購入者様と画家さんとの距離が近いことも画廊ならではなのかなと発見がありました。
余談ですが、画廊に足を運んだことが初めてだったので、一番最初に驚いたことは絵の値段です。目の前にこんなにも無防備に飾ってある作品の値段に、目を白黒させ、数歩下がって0の数を何回も数え直しました。
2日目
本日は片山雅史展 <群蝶図/メメントモリ>の作品紹介動画を制作しました。片山先生の作品の特徴である「立体感」を感じさせることができるようにこだわりました。蝶が舞い上がっているように撮影したカットにもご注目ください。
片山雅史 「群蝶図/メメントモリ」
午後は少し、時間があったので「常設展」の方を見学しました。その中でも、中村宏太先生の作品が目に止まりました。弾痕を使った作品と今まで出会ったことがなかったのでしばらく見つめ続けてしまいました。近距離で射って飛び散ってしまった破片の間から、後ろの版の色(カラーフィルム?)が見えていて色のコントラストが綺麗です。弾丸という暴力的なイメージのものからこんな儚い作品が誕生する。すっ、すごすぎる。作品と画材とのギャップに驚かされた作品でした。
中村宏太「境界」
3日目
今日も作品のひとつにスポットを当てた紹介動画を制作しました。今回は<皮膜2023/向日葵>です。まず、撮り始めて思ったのが「大きい!この作品とても大きい!」この一言に尽きます。メメントモリを撮影した時と同様に「立体感」と今回は「サイズ感」がより伝わるように製作してみました。
片山雅史 「皮膜2023/向日葵」
天井に届きそうなくらいの大きさ
片山先生の作品についてインタビューをする機会を頂いたので色々質問をしました。<皮膜2023/向日葵>は「ひまわりの4分の1だけを描いた作品じゃないか」とお尋ねしました。ちょっと違った解釈をしていました。「そういう解釈もあるんだね。一回見ただけで、すぐにわかるようにはしていないからね。」と優しいお言葉をいただきました。片山先生ありがとうございます。
4日目
映像製作は本日お休みでした。代わりに昨日の片山先生へのインタビューをもとに動画の紹介文を考えました。いつも三脚を持って駆け回っていたので、不思議な気分でした。
1日中タブレットと向き合って、キャプションを考えて行きます。作品のキャプションを考えたことがなかったので、画集を参考にしながらちょっとカッコつけた文章を書いてみます。ですが、あまり作品の良さが伝わらなかったぽく一案目はボツになりました。慣れないことはするものではないなぁ・・・っと実感。
休憩の際に緑茶をいただきました。私はコーヒーが飲めないので、コーヒーをぐびぐび飲めるみなさんが頼もしい。
5日目
本日が最終日です。今日は1日目から3日目の間に撮った映像をまとめる作業。ブログを製作する作業、キャプションのリベンジに挑みました。
動画の方は総集編という形でどこかにアップされるとのことでした。私の培ってきた技術がお役に立てているだけで嬉しいです。リベンジしたキャプションはなんと合格をいただき、インスタの<皮膜2023/向日葵>の動画の説明欄に掲載することが決まりました!午後からはこのブログを製作しました。 あっという間の5日間でした。
会場全体が見渡せるお気に入りのショット
大学で学んだことが少しでもみぞえ画廊さんのお役に立てていれば光栄です!絵画作品を取る機会なんて、滅多にできないような貴重な体験をありがとうございました。スタッフの皆様がお優しく、毎日出勤するのが楽しくてあっという間でした。
初日から最終日までギャラリー内を好きなように自由に撮影させていただいたり、時には脚立などもお貸しいただきありがとうございました!
もう一人お礼を言いたいものがいます。
5日間共に仕事をしてくれた相棒のタブレット
それは撮影をするときも動画を編集するときも、文章を書くときも君がいなければ、私は仕事ができなかった。
ありがとう相棒のタブレット!これからも美術作品を素敵に撮影してくれ。短い間だったけど元気で!相棒!
この経験を大学の映像作りにも活かしていきたいです!!充実した楽しいインターンシップでした。本当にありがとうございました。
以上、Nさんによる日記でした。
今回は、作家への取材もチャレンジしていただきました。5日間本当にお疲れさまでした。これからも得意分野を生かしてどんどん新たな世界に飛び出していってほしいです。スタッフ一同応援しております!
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本年もよろしくお願いいたします。
新年を飾る展覧会がスタートしました!
西日本初公開の名品をはじめ、内外の近現代巨匠・大家の作品を展示させていただいております。
展示構成は大きく二つに分かれており、新館では西洋名画、本館に国内作家となっております。
西日本初公開!他、注目の新着作品。
会場内でも一際存在感を放つピカソとシャガールの本画は、昨年の弊画廊東京店の展覧会より巡回しています。
展示中のシャガール《 オルフェ 》は、シャガール健在の1976年に日本で開催した展覧会で展示されたものです。おそらくは日本のオーナーに所有されたのち、記録上は1976年以降日本での展覧会出品歴はないまま海外のオーナーに渡り、今回再び日本の地に降り立ちました。
ピカソ《 女の顔 》は、東京店展示の時点で日本初公開となったものです。
同じ壁に掛けられているのは象徴主義の代表的画家であるオディロン・ルドン。さらに入り口では、今なお画家たちに影響を与え続けるエゴン・シーレの作品がお迎えいたします。反対の壁には、マティスと並びフォービズムの祖であるアンドレ・ドラン。こちらも新たに所有した作品です。
19世紀後期ごろから20世紀にかけて活躍した、代表的な画家たちの作品が集結!
新館に展示中の作家を年代順に並べてみました。
印象派
野獣派
象徴派
キュビズム
エコールド・パリ
ウィーン分離派
など、美術史の中でも語らずにはおられない重要なムーブメントを代表する画家ばかりです。
お互いの作品をどこかで目にしたのかもしれない・・・と想像すると胸が熱くなります。実際に、モネとルノワールは家族ぐるみの付き合いでしたし、マティスとルオーは手紙のやり取りがありました。
芸術の多様化が始まった時代。
〇〇派ってなんだろう?色々ありすぎてわからない・・・
簡単に言うと、当時の政府が定めた美の基準からはみ出していった人たちです。
当時絶対的な美の基準は、アカデミー(国立の芸大)やサロン(政府主催の公募展)でした。そこでは「歴史や肖像などを主題とすること」「輪郭は明快に・筆あとなく描かれたものが美しい」と定め、この支配は200年続いていました。
そこを飛び出した芸術家たちは、〇〇派と銘打って集団を結成し、独自の思想を打ち出すと、若き芸術家たちの斬新な作品は徐々に一般に受け入れられるようになりました。そうして芸術の多様化が始まると、何を基準に絵を見ばよいかわからない!という大衆の声に応える画商や批評家の影響力が高まり、それにともない、芸術家たちも画商や批評家との繋がりを求めるようになりました。このように、現在まで続く美術市場の形が形成された時代でもありました。
印象派と象徴派。
なかでも、印象派と象徴派は先駆的でした。
産業革命以降、写真技術が向上し、写実性が重んじられなくなったことや、チューブ入りの絵具や鉄道の整備開発されたことは、「あるがままを描くことが大事!」という印象派の創生を後押しすることになりました。
一方で、大量生産で物質的に豊かになるにつれ、「目に見えないものの方が大事!」という人々の気持ちも膨らんでいったことでしょう。目に見えないもの、すなわち愛、喜び、死、不安や悲しみといった、内面の感情を重んじたのが象徴派でした。
この会場で言うと、モネ、ルノワールは印象派、ルドンは象徴派です。
さてここからは、みぞえ画廊としても初めての取り扱いとなったオディロン・ルドンとエゴン・シーレについて、少しご紹介させていただきます。
遅咲きの巨匠、オディロン・ルドン。
オディロン・ルドンは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍した、フランス象徴派を代表する画家です。
裕福な家庭に生まれるも幼少期は病弱で、生まれてすぐに叔父に預けられ、学校にも通えず、その後の寄宿舎でもなじめず、孤独な子供時代を過ごしたようです。青年期に、植物学者のアルマン・クラヴォーと出会い、当時の話題であったダーウィンの進化論や、肉眼では見ることのできない生命体(をおそらく顕微鏡で見た)への知識を得たと考えられています。その経験は、彼の作品に大きな影響を与えました。
その後、出版した石版画集には、人間のような顔を持った蜘蛛や、気球のような眼玉など、怪異なイメージが描かれています。印象派が全盛であった世において、木炭の黒のみで精神世界を描いた作品は特に異質であり、後々若い画家や批評家たちに強く支持されました。現在では「黒の時代」として知られています。
黒の時代には発表することは殆ど無かったものの、油絵も並行して制作しており、晩年は、パステルや油彩で花や植物を色鮮やかに描いた「色彩の時代」へと移行しました。この変化のきっかけは、長男を亡くしたのちの次男の誕生にあるのではないかとも言われています。1890年頃、50歳を過ぎてからのことでした。
現在展示中の《花瓶の花》は、一見するとよくある静物画のようですが、花瓶が置かれているはずのテーブルや、その背景を示唆するような描写がありません。そのため、モチーフは空間に浮遊しているように見えます。全体のうつろな雰囲気に反して、花弁は動物のように躍動しています。「夢幻的」と評されるこうした特徴は、「色彩の時代」にしばしば感じられます。写真ではお伝えできませんが、非常に複雑な色をしており、吸い込まれるようです。
夭折した天才画家、エゴン・シーレ。
エゴン・シーレは、19世紀末ウィーンを代表する画家です。幼少期からその才能は抜きんでており、ウィーン美術アカデミーには学年最年少の特別扱いで入学しています。しかし保守的な教育になじめず退学し、同アカデミーの先輩でもあったグスタフ・クリムトの元へ弟子入りしました。当時タブー視されていた裸婦や、死、性を積極的に描き続け、批判があっても信念を貫いていました。
当時は、聖書や神話や異国を題材にしない限り、裸婦を描くのはルール違反でした。現代で見てもなかなかエロティックな作品が多いので、彼の作風に対して当時の批判はかなりのものだったと想像できます。街を追われたり、裁判で絵を焼かれたこともあったようです。そんなシーレを支えた人物の一人を描いた作品がこちら。
現在展示中の本作は、早くからシーレの才能を見出し支えたパトロンのハインリッヒ・ベネシュが描かれています。彼は特に裕福な人物ではありませんでしたが、オーストリア美術のコレクターで、シーレの作品も数多く購入しました。批判を受け街を追われるシーレをかくまったりと、相当に親密にかかわっていたことが窺えます。
裏面には、シーレの代表作に多くみられる直線的でダイナミックなポーズをとる自画像が描かれています。夭折の天才画家エゴン・シーレと、鉄道総監督ハインリッヒ・ベネシュ。画家とパトロンという関係以上に使い絆で結ばれていたふたりを象徴するかのような作品です。
今月下旬から、東京都美術館ではエゴン・シーレ展も開催されますので、是非ご覧ください。
本館には日本の近現代洋画を展示しております。こちらも名品ぞろいですが、ひとまずこれにて筆をおかせていただきます。。(長すぎた・・・)
JUGEMテーマ:美術鑑賞
]]>JUGEMテーマ:美術鑑賞
福井良之助《静物》水彩 1965年 35.5 x 53.0cm 鑑定書付
油彩画のセピア色を思わせながらも、最小限の彩色で魅せる静物の瑞々しさに目を見張ります。
早いもので今年も締めくくりの時節となりましたが、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
さて、みぞえ画廊では恒例クリスマスアートフェアを只今開催に伴い特別価格 (最大50%OFF) にてご提供させていただいております。大切な人へのクリスマスプレゼントやご自身へのご褒美として一期一会の作品を求めてはいかがでしょうか?
今回はジョルジュ・ルオー、ベン・シャーン、ジョエル・シャピロ、ピエール・アレシンスキー、ポール・アイズピリ、ジル・ゴリチなどの海外巨匠作家のリトグラフをはじめとし、堅山南風、山口華楊、小磯良平、加山又造、難波田龍起、坂本善三、野口弥太郎、北川民次、熊谷守一、中村琢二、石川滋彦などの国内作家の作品も数多く取り揃えております。
クリスマスの贈り物としてお求めになられてみてはいかがでしょうか。お気軽にお問い合わせください。
本館展示の様子
本館展示の様子
本館展示の様子
=主な出品作家=
坂本繁二郎/熊谷守一/岡鹿之助/野口弥太郎/小磯良平/猪熊弦一郎/北川民次/中村琢二/牛島憲之/石川滋彦/児玉幸雄/脇田和/井上長三郎/小山田二郎/福井良之助/糸園和三郎/松本英一郎/平野遼/織田廣喜/浜田知明/瑛九/山口長男/菅井汲/須田剋太/難波田龍起/坂本善三/津高和一/池田龍雄/靉嘔/加納光於/東山魁夷/加山又造/小山硬/堅山南風/山口華楊/奥村土牛/上村松園/伊東深水/マルク・シャガール/ジョルジュ・ルオー/アントニ・クラーベ/ベン・シャーン/ジョエル・シャピロ/ピエール・アレシンスキー/ポール・アイズピリ/ジル・ゴリチ/ポール・ギアマン/ジャン・カルズー/ベルナール・ビュッフェ/他
海外作家リトグラフコーナー
ベルナール・ビュッフェ「富士」 リトグラフ 72 x 53cm
富士山麓に位置する裾野で描かれたようです。美しい稜線が描かれてることからビュッフェも欧州の山々とはまた異なった趣をもつ富士山に深い感銘を受けたように思えます。
ジョルジュ・ルオー「熱帯の風景:ルビュおやじの再生より」エッチング 33x22cm
画商アンブロワーズ・ヴォラールの依頼で取り組んだ版画集『ルビュおやじの再生』
「キリストの画家」ルオーの「キリストの画家」というイメージを覆す挿絵。
舞台はフランスの植民地。支配される「黒人」の先住民(=被植民者)と、「ユビュおやじ」に代表されるグロテスクな「白人」の政治家(=植民者)を描いた版画集です。
国内作家 日本画、版画コーナー
堅山 南風「白拓楠花」日本画 25.5×23cm
昭和を代表する日本画家堅山南風の作品。”南風は自然に直接触れてこそ潜む「生命」を写し取る”として写生主義の原点を貫いた画家です。
国内作家 油彩コーナー
野口 弥太郎 「春の山」油彩 F4号
穏やかで微笑みかけてくれているような麗らかな春の山。春の到来が待ち遠しい作品です。
平野遼 「家と道」油彩 F6
穏やかな日の光と何処へ進むか分からない道との明暗が印象的です。平野遼ならではの技法が最大限映し出された作品の一つです。
小磯良平 エッチングコーナー
小磯良平 「静物」エッチング 25.5x29.3cm E.A
小磯良平の穏やかで洗練された作品の数々を是非画廊でご覧ください。
国内作家リトグラフコーナー
国内作家リトグラフコーナー
加山又造 「月と犀」リトグラフ 32.5 x 37cm 1960年作 ed.46/90
加山又造が1953年に描いた日本画「月と犀」とよく似ています。画面を覆う無数の線は圧巻です。是非画廊にて体感してください。月の大きさが異常に大きいことによるアンバランスや限られた色合いが斬新です。
33歳、苦学を経て師につき、新たな日本画の模索に励みつつ、琳派や大和絵にも関心を寄せていた頃だったようです。
菅井 汲 「Festival」 シルクスクリーン 43x 29.2? ed.148/200
時代を超越したモダンな一品。戦後単身渡仏し、国際舞台で大きな成功をつかみ取った抽象画家です。
その他山口長男、坂本善三、池田龍雄、猪熊弦一郎、津高和一、加納光於、靉嘔などの国内作家によるリトグラフ、シルクスクリーンなど多数展示いたしております。
年に2回の貴重なセールを開催中です。この機会にお気に入りの逸品を求めてはいかがでしょうか。会期中ご購入いただいたお客様へ下記お品をクリスマスプレゼントとしてお渡しいたしております。皆様のご来廊をお待ちいたしております。
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フラワーパーク本店ではクリスマスセールを実施!
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詳しくは下記ウェブサイト、またはお電話にてお問い合わせください。
会場 フラワーパーク本店(みぞえ画廊となり) 公式HP http://flowerpark.info/
お問い合わせ 092-739-8783 フラワーパーク本店
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みぞえ画廊 福岡店では【南聡 展】開催中です。
2014年以来8年ぶりとなる本展では、画家 南 聡の新境地をご覧いただけます。
今回の展覧会では、私たちの生活のすぐそばの小さな、しかし力強い生命の営みと共存が
描かれています。
「日一日」 F150号 2022年
「草 影」 F50号 2022年
極く薄い麻紙・典具帖紙といった和紙に、叢に咲く季節の草花や、蟻や蜂・蝶などの昆虫を描き、
その作品を重ねて貼り合わせ、一つの作品を制作していきます。
絵と絵が重なった部分は濃くなり、また重なっていない分は薄くなり、独特の遠近感が生まれています。
「日 々」 F150号 2018年
「日々」より 草花が重なっている部分に濃淡が生まれ、画面に奥行きを感じます。
また、ところどころで使われている銀箔が光を拾って玉虫色に輝くさまは、幻想的な雰囲気を醸しています。
「草 間」 145×224 cm 2021年
「草間」より 銀箔を硫化し、複雑な色味を出しています。
季節ごとに草花を採集し、スケッチをして和紙に描くため、菜の花やドクダミ、朝顔など季節の違う草花が
一つの作品の中で共存し、四季が描かれています。
色彩を抑えたこれらの作品に対して、最新作は岩絵具を効果的に使っています。
「草虫図1」 F50号 2022年
「草虫図1」より 蟻や蟷螂がひっそりと、それでいて力強く描かれています。
胡粉や銀箔を使った白銀の下地に緑や青が映えて、また、ふんだんに使われた銀粉が朝露のようにキラキラと輝き、
身近にある世界がより一層美しく、愛おしく感じられます。
氏が持つ暖かく、優しいまなざしを、お越しいただく皆様にぜひ感じていただきたいと思います。
南聡展は11月27日(日)まで、会期中無休で開催いたしております。
26・27日は作家も在廊いたします。
ぜひ、お越しくださいませ。
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画家、柴田七美の新たな試み
みぞえ画廊福岡店にて、柴田七美展「劇中劇」が開催されました。
故郷福岡では2年ぶり、3回目の個展となる本展では、大作をはじめ、24点の作品を展示させていただきました。
前回の個展では、過去に見た演劇や映画のワンシーン、本の挿絵などの記憶の断片を寄せつめ、パーツを組み合わせて作り上げた架空の場面をモチーフとしあえて形骸化させ、形への意識を強くした表現を見せていました。その手法によって、「なにも描かない」ことで絵画を成立させ、絵の具の物質としての面白さを最大限に魅せることを追求されていました。
※前回の個展の様子はこちら↓
http://blog.mizoe-gallery.com/?day=20200916
しかし、本展では、その手法は一切使われていません。
劇と絵画が共通して持つ「入れ子構造」
柴田七美さんは、絵画の制作と並行して、10年ほど前から物語をかき始めており、自身と向き合って描き上げたそれは戦争の物語だったそうです。物語が完成する頃、世界情勢は大きく揺れ動いており、「何かを描く」ことの必要性を痛感したと言います。そうした中で、「何かを描きたい」という欲求と、これまでの表現が結びついて行きました。
元より近代史に関心が高かったこともあり、本展では史実やそれを元にした演劇などから想像を膨らませて描かれています。前回に引き続き、人物の絵がメインとなっていますが、風景や花を描いたものもあります。それぞれに、イメージの元となった過去の出来事が存在します。それらを観劇、あるいは調査し、想像した情景を描くことは、現実を映した記録や物語から画家が掬い取った幻想を描く行為です。絵画というもの自体が虚構である側面もあるため、丁度、劇の中で演じられる劇のように、虚構の中に虚構が展開されます。そのため、今回はモチーフを形骸化させる必要が無かったということになります。
2点の大作はどちらも「群衆」を描いたもの
《 暴動 》油彩 162×260cm 2022年
本展のメインを飾る大作。
「いつの時代の様子だろう?」
「何が起こっているんだろう?」
あえて時代や人物像を特定させない描き方が選ばれていることが分かってくると、鑑賞者の疑問を軽やかにかわしているようにも感じられます。史実を象徴するように存在するあらゆる群衆画は、史実であることから解き放たれたときに絵画としてどのような鑑賞体験をもたらすのでしょうか。
《 解体 》油彩 145.5×224cm 2022年
もう一つの大作。
群衆とは、時に革命にも発展するうねりを作り出すことができます。今回の群衆画2点には、そういった現象への興味関心も強く表れています。
本館でも一部の壁に、柴田七美展作品を展示いたしました。
背景に幕が描かれています。幕は柴田七美さんの作品で以前から描かれることがありましたが、本展では、演劇や演劇の脚本を元に想像したシーンを絵画化したものに描きこまれることが多いようです。
在廊中は、一つ一つの作品についての質問に丁寧に答える姿が印象的でした。
さて現在はみぞえ画廊東京店にて、巡回開催中です。福岡店で展示していなかった作品もございます。
どうぞ足をお運びください。
柴田七美展「劇中劇」
2022年 10月15日(土)〜 10月30日(日)
[作家在廊日]10月15日,16日,23日,24日,29日,30日
会期中無休 10:00-18:00
会場 みぞえ画廊東京店(大田区田園調布3-19-16)
JUGEMテーマ:美術鑑賞
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去る9/30から10/3の4日間に渡って第7回目「アートフェアアジア福岡2022」が実施されました。今年より福岡市が参画し、過去最大規模で実施されお陰様で大盛況で幕を閉じることができました。今回は福岡国際会議場とホテルオークラ福岡の2会場にて開催。「日本とアジアの、アートマーケットの架け橋に」をテーマに掲げ、約80のギャラリーが参加し多くのお客様でどのブースも連日有難く賑わいをみせておりました。
ご来場くださいましたお客様、企業・団体、並びに関係各所の皆様より多大なご支援を賜りまして、有意義なアートフェアの実現となりましたこと、まずは社員一同心より御礼申し上げます。有難うございました。
福岡国際会議場 会場の様子
福岡国際会議場 会場の様子
福岡国際会議場とホテルオークラ福岡間を運行するシャトルバス
さて、みぞえ画廊では、今回4人のアーティストによる作品を出展しました。
101歳を迎えても尚その活躍ぶりには目を見張る野見山暁治
※左側から順に
「莅」 油彩 F10号 1982年
「ずっと待ってる」 油彩 F25号 2015年
「どこまで行ったやら」 油彩 F4号 2020年
「すぐ変わる」 油彩 F6号
上記油彩の他、1970年代の水彩画、コラージュ作品なども多数展示。
益々作品に深みと広がりがみれ、名だたる海外アートフェアの出展も数多く経験。
国内外問わず熱い視線が寄せられる小松孝英
※左側から順に
上)「蝶舞」アクリル・箔・キャンバス F8号 2022年
下)「流水吸水図」アクリル・箔・キャンバス M20号 2022年
「黒舞」アクリル・黒貝箔・キャンバス M50号 2022年
「炭化」 アクリル・キャンバス P40号 2022年
「ハヤ」 アクリル・キャンバス M6号、P8号、M10号、M20号 2022年
架空の場面をモチーフとしあえて形骸化させ、
絵の具の物質としての面白さを独自の表現方法で最大限に描ききる柴田七美
パラソルの女 油彩 F20号 2022年、役者 油彩 F8号(上・下)2022年
※みぞえ画廊東京店にて柴田七美展「劇中劇」を10月30日(日)迄開催!
展覧会詳細サイト
https://mizoe-gallery.com/exhibition#20221015
一見個性的な油彩の作品でもその確かな描写力が圧巻。
画材の研究に余念がなく、常に新しい作風を追い求める若きアーティスト八頭司昂
左)「something that is no one 」 パネル、寒冷紗、酢酸ビニル樹脂、との粉、ジェッソ、カシュー、アクリル絵具 53×80cm 2022年
右)「something that is no one 」 パネル、ジェッソ、アクリル絵具、油絵具 53×45.5mm 2022年
「At ARKS.」パネル、寒冷紗、酢酸ビニル樹脂、との粉、ジェッソ、アクリル絵具、油絵具 58.3×88cm 2022年
※みぞえ画廊福岡店にて八頭司昂展「はんすう」を10月23日(日)迄開催!
展覧会詳細サイト
https://mizoe-gallery.com/exhibition#20221008
画家在廊日:10月22日、23日
在廊日にはライブペインティングを実施しております。
実際にブースに居合わせた出展アーティストから作成秘話を熱く語っていただき貴重な体験を得ることができたとお客様よりお声を拝聴しました。作品展示の他、複数の出展アーティストとの貴重な出会いも大規模のアートフェアならではの魅力です!
フェア開催期間中、宮津大輔氏キュレーションブース「Leading Asia」、AFAFアート映画上映、トークセッション等の魅力的なイベントも施されており、実際に体験されたお客様も多数おいでのことと思います。中でもキュレーションブースでは作品テーマ「Meditate⇔Act agilely (深く考えろ⇔機敏に動け)」を掲げ、「Leading Asia」のエネルギッシュなアジアの都市の断面を表現。多彩なアート作品に度肝を抜かれたお客様もおいでではないでしょうか?
AFAFアート映画上映ではみぞえ画廊出展アーティスト野見山 暁治さんのドキュメンタリー映画「描き続けて 〜野見山 暁治 101歳の肖像〜」や同じく出展アーティスト小松孝英さんが監督を務める「塩月桃甫」など上映され、多くのお客様より反響を頂戴しました。
更には別会場のオークラホテルでも大変な盛況ぶりでした。
ホテル9階の客室を全室貸切りにし、福岡国際会議場とはまた違った環境での作品展示を展開いたしておりました。
作品展示の詳細につきましては下記VR動画でご覧いただけます。
ホテルオークラVR動画
https://my.matterport.com/show/?m=zEwqhZR165s
今回のアートフェアでは「Fukuoka Wall Art Project」による「Fukuoka Wall Art 賞」受賞作品の展示も行われました。
「Fukuoka Wall Art Project」は作品を幅広く公募し、仮囲い等を活用した街中での発表の場と作品を展示・販売。その機会を提供することで、アーティストのさらなる活躍の場につなげ、アートによる街の賑わいの創出などが主な活動の目的です。
Fukuoka Wall Art Projectの詳細は下記サイトにてご覧いただけます。
そして「Fukuoka Wall Art 賞 2022」の輝かしい受賞作品はこちらです!
Fukuoka Wall Art 賞 受賞作品展示コーナー
※左側から順にご案内
安藤圭汰:「永劫はこれただ瞬時」、神園宏彰:「光と風の集積」、
銀ソーダ:「刹那」、小島拓朗:「untitled」、鈴木淳:「On the Bed 002-3」
AFAFのサイトにもありますが、今回は九州で初めて、福岡市の支援を得ての保税展示となりました。日本以外にも海外ギャラリーの誘致の末に、海外作品も含めたアートに触れられる大規模なフェアが実現されました。市内の各所でもアート作品が展示され、福岡はいつになく活気に満ちていました。来年の会場はマリンメッセB館での実施予定。更に充実した内容で皆様にお楽しみいただけるフェアとなることと思います。またそのようになりますよう、地元福岡の参加ギャラリーとしても、一同努めて参ります。
この度ご来場くださいました皆様、出展者の皆様、並びに関係各所におけるスタッフの皆様によるご協力を賜りましたこと、重ねてお礼申し上げます。
今後も引き続き、福岡がアート発信の都市として世界でも注目される魅力的な都市の一つと位置付けられますよう我々ギャラリーも日々一層精進して参ります。来年も引き続きどうかご支援の程、よろしくお願いいたします。
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美術館やギャラリー巡りに最適な心地良い季節が巡ってまいりましたが皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
さて、みぞえ画廊 福岡店では「はんすう 八頭司昂展」を10月23日(日)まで開催中です。
本展では「一つのモチーフで複数の作品を制作する」というコンセプトを基にアーティスト八頭司昂の新作を100号以上の大作含め約30点展示いたしております。鮮やかな色彩と自在に画面を這いまわる線が印象的な八頭司の世界をご堪能ください。
在廊日(画家在廊日:10月15日、16日、22日、23日)にはライブペインティングも実施します。お誘い合わせの上、是非みぞえ画廊福岡店へお立ち寄りください。
新館展示の様子
新館展示の様子
ライブペインティング用仮設アトリエ
八頭司さんがアトリエでいつも愛用している道具や画材を一式ご持参いただいております!
八頭司昂さんは22歳の時に田川市美術館主催の"英展"において大賞を最年少で受賞。早くからアーティストとしての頭角を現し、コレクターからも注目される存在です。
みぞえ画廊では東京店での個展も含め今回3度目の個展を開催する運びとなりました。
今回の展覧会タイトルは「はんすう(反芻)」と題されています。反芻とは、「思い出を反芻する」といったように、繰り返しの意味の言葉ですが、牛が胃の中に入った食物を口に戻してゆっくりとすり潰し食物の消化を促す働きを指す言葉でもあります。牛の1日の反芻時間は6〜10時間で、1分間に40〜60回咀嚼。噛んでいる間に唾液が分泌され、この唾液がエサを湿らせてのみこみやすくし、胃の中の微生物の働きを活発にして消化を助けます。
八頭司さんは制作している時にふと、この「反芻」という言葉が浮かんだと言います。1つのモチーフに対して1枚ではなく複数枚描いてもよいのではないかと感じたそうです。その為今回の個展では、ほとんどの作品において同じモチーフが複数枚描かれています。素材、色合い、トーンのバリエーションの他、キャンバスを立体として捉えたものもあり、絵画というもの自体が、あらゆる側面から反芻されています。それらは画家の脳内で咀嚼され、画家のDNAを含んで絵画として存在しており、一つの生き物のようにも思えます。
では、まず観る者に衝撃をあたえる圧巻な作品をご紹介いたします。
「something that is no one 誰でもない何か」。メガネをかけた人物像が4点の作品に渡って反芻されており、全て同じタイトルがつけられています。
「something that is no one 誰でもない何か」 2022年 53×45.5cm
パネル、ジェッソ、アクリル絵具、油絵具
「something that is no one 誰でもない何か」 2022年 53×80cm
パネル、寒冷紗、酢酸ビニル樹脂、との粉、ジェッソ、カシュー、アクリル絵具
描画された線だけを残して、キャンバスが二つに離れています。「これどうなってるの?壊れてしまわないか心配になるね・・・」といったご感想をいただくこともございます。(実際にはある程度の強度を持つように工夫されています)
右)「something that is no one 誰でもない何か」 91×91cm パネル、綿布、ジェッソ、アクリル絵具、油絵具 2022年
左)「something that is no one 誰でもない何か 」 91×91cm パネル、寒冷紗、カシュー、アクリル絵具 2022年
通常絵画では用いられない「カシュー」という漆系の塗料で線を描いています。
マットな黒の背面に艶やかなカシューによってより一層の立体感が生まれます。
八頭司さんの表現が3次元へ踏み出していきます。
描かれているのは、AIによって自動生成された誰でもない人物です。
AIは膨大な量の人物写真データを取り込み、分析し、「人間に見える像」を作り出すことができます。それらの画像は、本物の人間の写真かそうでないかを見分けることが大変に困難だと言われています。瞳の形がごくわずかに歪んでいることから判別できる場合もあるそうです。目のところから描画が歪んでいるのは偶然でしょうか。
八頭司さんの手で繰り返し描かれ、素材やキャンバスの分割などの変化がもたらされることで、「誰でもない何か」はどのような意味合いを持つでしょうか?
あるいは人間が常に不安定であり、また不完全であることを示唆しているようにも思えます。
次に、「The dream may be continuing. 夢が続いているかもしれない」をご紹介。
1辺160cm強もある大作です。八頭司さんが動物園で出会ったという、カンガルーがくつろぐ様子。同じシーンが2枚、繰り返すように描かれていますが、色合いや絵の具の垂れ具合などにより大きく異なる印象を与えています。
色の陰影により立体的にみえたりその逆で平面に広がったり。作品2点を見比べて凹凸、プラス・マイナスの感覚でがっちり当てはまるかと思うとそう簡単には参りません。謎めいた感覚が心に宿り、鑑賞の余韻が響き渡ります。
右側の作品からは柔らかい光を感じ、まさに余白の美も表現されてます。まるで昇天した動物達の暮らす楽園に思えたり・・・。
ご鑑賞いただきました皆様にも、思い思いに想像を巡らせていただける、奥行きのある作品となっています。
八頭司さんが繰り広げる色彩の幅の広さを体感する作品の一つです。
「The dream may be continuing. 夢が続いているかもしれない」
2022年 162×162? パネル、綿布、酢酸ビニル樹脂、ジェッソ、油絵具
「The dream may be continuing. 夢が続いているかもしれない」
2022年 162×162? パネル、綿布、酢酸ビニル樹脂、ジェッソ、油絵具
さて、コロナ禍ならではの光景が描かれた作品「At ARKS. アルクスにて」をご紹介。
「At ARKS. アルクスにて」 2022年 58.3×88cm
パネル、寒冷紗、酢酸ビニル樹脂、との粉、ジェッソ、アクリル絵具、油絵具
広場に並ぶ群衆は皆、当たり前のようにマスクをし、久しぶりの外出でしょうか?なんだか並ぶという面倒な行為すらも受け入れているようにも思えます。見事な遠近法により多くの色が使われているなかでも全体のバランスが保たれています。まさに「八頭司マジック」にかけられた作品です!
上記ご案内させていただきました作品の他、下記のように植物をモチーフにした小作品が本館、新館にてご覧いただけます。
八頭司さんの確かなを描写力を感じさせます。
お好きなお色がきっと見つかるのではないでしょうか。画材も様々で、螺鈿が使われている作品もございます。
実物を前にすると、その素材の違いはにより異なる風合いが一つ一つの作品にはっきりと表れており、画材の研究に余念ないことが窺えます。
リュウゼツラン
「Agave リュウゼツラン」 2022年 18×12.5 ?
パネルの他、寒冷紗、酢酸ビニル樹脂、アクリル絵具、油絵具、紙、金箔、寒冷紗、カシュー、水性樹脂、螺鈿使用
(作品により素材は異なります)
セイヨウアジサイ
「Hydrangea macrophylla セイヨウアジサイ」 2021年 29.7×21?
パネルの他、白亜地系下地材 アクリル絵具、油絵具、螺鈿 、金銀箔使用
(作品によって素材は異なります)
「Try to connect depth with finger to finger 奥行きを指と指で繋いでみる」
182x91cm
パネル、綿布、酢酸ビニル樹脂、ジェッソ、アクリル絵具(アクリルは右の作品のみ使用)、油絵具
在廊日には、ライブペインティングもご覧いただけます。現在同じモチーフで2つの作品を制作中です。八頭司さんが完成!と筆をピタリと止める瞬間を画廊で体験してみませんか。
八頭司さんはまず対象となるモチーフを観察し独自の視点で色彩と線を再構築。そして、多岐にわたる表現を見出すために画材ひとつひとつの研究にも常に力を注いでます!
八頭司昂 (やとうじ たかし)
1990年愛知県生まれ。2015年 佐賀大学大学院教育学研究科教科教育専攻美術教育専修 修了。'12年 第62回佐賀県美術展覧会 佐賀県知事賞 受賞。’13年 第22回英展〜人物・風俗〜 大賞 受賞、第63回佐賀県美術展覧会 佐賀商工会議所連合会賞 受賞、第1回YWCA(山梨ワイン&アートオークション)入選、第22回MCAGP(三菱商事アート・ゲート・プログラム)入選、2013年度MCAGP奨学生。’19年 大川市立清力美術館にて個展。
「はんすう(反芻)」とは、画家自身の作品へのマンネリズムに対しての懐疑、そして新たな可能性への期待から素材や描画方法、モチーフの選択肢を見直すことです。本展では、平面作品を3次元的に延伸させる挑戦も含め、同じモチーフに対して2つないしは複数の作品を展示しており、それらはアーティスト八頭司昂自身の「反芻」の軌跡を表すものです。
努力を惜しまず、常に作品の見直しを重ねた上で進化を求める若きアーティストの軌跡をみぞえ画廊でたどってみませんか。多くの皆様方のご来廊を心よりお待ちいたしております。
「はんすう 八頭司昂展」
2022年10月23日(日)まで開催中です。
画家在廊日:10月15日、16日、22日、23日
在廊日にはライブペインティングを実施します。
会期中無休 10:00-18:00
会場 みぞえ画廊福岡店
(福岡市中央区地行浜1-2-5)
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連日猛暑が続いておりますが皆様お変わりなくお元気にお過ごしでしょうか。
さて、みぞえ画廊で8月28日(日)まで開催いたしておりました、野見山暁治展 「描いて、描いて、未だ描いて」を少しご紹介いたします。
本展では、101歳を迎えてなお進化を続ける野見山暁治の「いま」を、終戦直後から滞欧時代、帰国後の各時代の作品とともにご覧いただきました。
本館展示の様子
本館展示の様子
個展初日には野見山先生がご来廊されました。時代ごとの展示作品をご覧になられ当時のエピソードを楽しく語ってくださいました。個展初日には沢山のお客様がご来廊くださり野見山先生と皆様とでとても素敵な時間を過ごされました。
「炭鉱の一隅」 板に油彩 F4 号 1951年頃
画家野見山暁治は筑豊の炭鉱地帯で生まれ育ちました。本展で最も古い作品「炭鉱の一隅」は郷里筑豊の風景を原点に戦後復員し画家として再出発した貴重な作品です。
1952年、野見山はフランス政府私費留学生として渡仏。通算12年間をフランスで過ごしました。下記3作品は風景画から抽象画へと作風が大きく変わったフランス滞在期間に描かれた作品です。
野見山はパリ郊外ライ・レ・ローズの丘の中腹にあるアトリエを彫刻家高田博厚から譲り受けます。
豊かな自然に囲まれたアトリエで野見山は「丘」「樹木」などの新たなモチーフに出会い、それらを描くことに挑戦しました。
「根」 油彩 P30号 1964年
魔法使いのとがった爪を連想させる形と斬新な色合いは洗練されており、都会的でありながら東洋的な神秘性も併せ持っています。
画家現在101歳。尚も作品制作を続ける画家本人のとてつもなく強い生命力たるものを、今でこそこの作品から感じます。
目に見える現象の奥に潜むものの気配を感じ、自然の姿を再現するのではなく、自然の本質が持つ形にさらに深く踏み込もうと描く
。そして更に描けば描くほど具象性が失われると画家は言います。
「ノートルダム寺院」 油彩 F10号 1955年
時には作品「ノートルダム寺院」 のような風景画を描いては日本へ輸送しフランスでの生活費にあてがっていたようです。フランスと日本ではキャンバスのサイズが異なり日本で額装する際、微調整が必要で画家が望む絵のバランスにならないこともしばしばあったようです。いかがですか?上記教会の尖塔はもっと高く描かれていたのではないでしょうか?
1957年、32歳の頃渡仏。西洋人のもつ造形感覚、立体感覚、質感などを表現するための油絵具の技法を極めようとするも、画家は徐々に違和感を感じ始めます。
そして1964年日本に帰国。帰国の決定的なきっかけは中国宋時代の山水画のレプリカに触れたことです。
岩か山のようなごつごつした物体や、うねらせている樹々、ゆるやかな川や稜線。西洋の立体に比べて東洋の平面は強さに欠けると今まで思っていたがそうではなないと感じたと言います。東洋的な表現の奥ゆかしさを再認識し帰国を決意しました。
「8月のおわり」 油彩 S50号 1997年
円熟期、画家70歳代後半に描かれた作品。
賑やかで情緒的な夏にも終わりが近づく・・・作品からどことなくせつなげな気持ちが芽生えます。
また大海原からゆっくり動き出そうとすり原動力もじんわり感じてくるようです。
最初は海面に映る山に思えましたがだんだん何か得体の知れない物体にも思えてきました。でも何であるか分かりません。
永遠に繰り返される季節の移ろいは、このようにして謎めいたものなのかもしれません。
「ままならぬ景色」 油彩 130号 2010年
この作品は2011年にブリジストン美術館での個展出品作品です。画家90歳の時の作品です。高さ193×162cmの大作。
まさに色彩のハーモニーを奏でているかのようです。また、上下絵の具が垂れており画家がキャンバスの角度を動かしていたことがうかがえます。描かれている赤は2008年東京メトロの「明治神宮前駅」に設置されたステンドグラスの原画で野見山が描いたあの赤と同じような印象をもちます。光を通して煌めく赤をは会場内でもひと際輝いていました。
「知らない季節」 油彩 F100号 2021年
「知らない季節」は今年の初めに開催された、小説家の堺屋太一記念東京芸術大学美術愛住館での「野見山暁治展 100年を超えて」にて展示された新作です。みぞえ画廊本館奥のスペースではここ1年ほどで描かれた新作の数々を展示いたしております。圧倒的な鮮烈な色彩と力のこもったマチエールなど実際に画廊にて体感してください。
左下部分の拡大
泉の如く溢れ出るエネルギーとそのみずみずしさ。
「これだけ」 油彩 F15号 2022年
「これだけ」は今年になって描かれた初展示作品の中でも最も新しい作品です!101歳で描かれた作品とは思えない躍動感に溢れる作品。
本館ではこのほかにも、帰国後東京藝術大学の教授を務めた1970年代から都会的な灰色を主体とした1980年代の作品など、多数展示させていただきました。
さて、次に新館の水彩画をご紹介。
本展では新館にて約25点に及ぶ野見山暁治が描いた水彩画を一挙ご覧いただけますます。
新館展示の様子
野見山が裸婦やモデルを起用した作品の数は限られます。本展にて展示中の上記裸婦は当時60代。別人のように思えますが3枚共同じ女性が描かれております。左下の女性のフォルムなどとても上品に描かれております。
「アニタその後」 水彩 77x56cm
帰国後の野見山のもとへ絵のモデルをしていたアニタが来日し野見山の前に現れました。そしてアニタが自分を描いてほしいと。。。。
久しぶりの再会で感無量となり、思うようにはアニタを描けなかった、、、と会場で懐かしそうに語られました。
ただ、お互いの信頼関係がこの絵には映し出されているように思えます。
アニタの表情からやっと画家に会えたという嬉しさ、安堵感、そして懐かしさがこみあげてくるような作品です。
「予告にみちた季節」 水彩 57x76.3cm 1990年
糸島のみならず東京のアトリエの急な階段がモチーフとなった「階段シリーズ」の作品です。
現在もその急な階段を画家自身が登り降りしているそうです。
「ケムクジャーラの中から 」 水彩 18x40cm 2006年
野見山暁治が絵と文章の両方を担った2007年創刊の絵本「ケムクジャーラ」の原画です。
野見山は獣は友達だと語り、はるかな祖先の人間第一号の姿を描いた絵本です。
「テラス」 水彩 80.7x117cm 1971年
南仏の老舗ホテルのテラスのような現場を想像しますが、舞台は日本です。
心地よく風が吹く様を画廊で感じてください。上品な色合いで清涼感に溢れる作品です。
「また会うでしょう」 水彩 38.5x56.5cm 2003年
他界された奥様を忍んでの作品です。
奥様が愛用されていた帽子が作品のモチーフになってます。本展の水彩画作品の中でも一際目立ちます。色彩とモチーフがくっきりと描かれており作品の中に吸い込まれそうな作品です。
背景はグレートーンで描かれており哀愁やせつなさを感じますが、主役の帽子の鮮やかな色からは、自身を奮い立たせ「ゆっくりかもしれないが前を向いて歩こう!」という強い気持ちも感じます。
まさに人生の機微を痛感する沢山の思いがつまった作品のように思えます。
画家はこう語ります。
自分の中にある確固とした何ものかを表現したい。
未だ到達できない何かを求めて・・・
本展は本日終了となりましたが、もちろん野見山暁治は未だ描き続け、その歩みはより力強くなってゆかれることでしょう。
沢山の方にご来廊いただき、誠にありがとうございました。
★お知らせ★
さて、その野見山暁治氏の画業を顕彰するギャラリーが、この度氏の出身地である飯塚にオープンいたしました!
みぞえアートギャラリー野見山暁治館 開館のご案内
8月26日(金)よりオープン!
営業時間などの詳細は下記公式サイトにてご確認ください。
WEB https://www.nomiyamagyojigallery.com/
みぞえアートギャラリー野見山暁治館
住所 〒820-0041 福岡県飯塚市飯塚15-26
TEL 094-843-8212
営業日 金・土・日・祝 (ただし 大型連休は休館)
営業時間 12:00-17:00
交通案内
〈 電車 〉 JR飯塚駅から徒歩15分
〈 車 〉 駐車場4台あり。徳前パーキング内。
弊画廊にて展示していなかった作品の数々をご覧いただけます。是非足を運ばれてみてくださいね。
<News>
野見山暁治役を名俳優が熱演!
8月27日(土)
FBS福岡放送「24時間テレビ45」スペシャルドラマ「無言館」が放映されました。野見山暁治役を寺尾聰氏が熱演。(主人公無言館創立者の窪島誠一郎役:浅野忠信)無言館は長野県上田市にある戦没画学生慰霊美術館です。
https://www.ntv.co.jp/24h-drama2022/articles/3069hrcjy704rmngamae.html
<参考情報>
戦没画学生慰霊美術館 無言館
http://mugonkan.jp/about/
〒386-1213 長野県上田市古安曽字山王山3462
野見山暁治氏が、どんな思いで絵を描き続けてきたのかを想い、胸が熱くなりました。ドラマ放送の翌日は、無言館は通常の40倍の入場者数だったそうです。
是非こちらもチェックしてみてくださいね!
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みぞえ画廊東京店にて、「藤澤江里子(絵画)・細井 篤(彫刻) 二人展」が、7月16日より開催中です。ご案内状にも書きましたが、企画概要について以下に記します。
1995年セゾン美術館(現在は閉館)において「視ることのアレゴリー 1995:絵画・彫刻の現在」という意欲的な企画展が開催され、総勢30名の国内の美術家が紹介されました。藤澤江里子は絵画の作家として、細井 篤は彫刻の作家として参加し、お互いに刺激しあいながら活動を続け、27年の歳月が経ちました。
みぞえ画廊では、ミッド・キャリアの作家(継続して長年作家活動、作品発表を続ける)の中から、あらためて評価されるべき作家、作品をご紹介したいという思いから、二人展として、線と形を色相の響き合いへと置換し、繊細な線と深遠な色調によって絵画を作りだす藤澤江里子と目に見えないものの気配・存在をかたちにして、イリュージョンと物質感を往還する細井 篤をそれぞれの新作を中心にご紹介いたします。
エントランスを入ると、130号の藤澤江里子の線のドローイング作品と細井篤の立体作品がお出迎え。藤澤の作品は27年前のセゾン美術館で展示した作品と同じ系譜。変わらずに線と形を追求している姿勢がすばらしいです。制作には2〜3か月かけて、眺めては書いてを繰り返すといいます。キャンバス全面に膠を2回塗り、しみこみを抑え、その上にオイルバーとパステルの黒で描く。細井の作品は、3つのパーツがバランスをとりながら立っている
ユニークな立体作品。
個人的には、この作品が特にすばらしいと感じています。多くの方が同様に感想を述べて
おられます。この作品は、塗り込み型の系譜になり、線のドローイングよりは新しいスタイルになります。キャンバスの上にベースとして油彩を使い、その上に、オイルバー、パステルなどが使われています。
会場のあちこちに細井 篤の立体作品が展示されています。和室では、藤澤作品と呼応するように対面した壁に展示しています。奥の作品は、鉄筋を曲げて制作された作品で、27年前のセゾン美術館で展示された作品と同シリーズになります。
対面に展示された藤澤江里子の新作。作品は、キャンバスの作品で4号4万円税込からと
キャリアから考えたらとてもリーズナブルな設定となっています。
お二人ともミッド・キャリアの作家ですので、略歴も個展、グループ展とかなりの数があります(一部抜粋してありますが)。
今回は、一部の展示のみご紹介いたします。おって次回さらに展示内容をご紹介いたします。
会期・会場:
・みぞえ画廊東京店(田園調布) 2022年7月16日(土) 〜7月31日(日)
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今年は例年よりも早く蝉時雨が鳴り響いておりますが皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。
さて、みぞえ画廊では渡辺浩二展―風の神殿―を開催いたしております。渡辺さんにしか表現できない他に類のないブロンズ作品約25点展示いたしております。
新館の様子
今回の作品展「風の神殿」では、イタリアで培われた洗練されたデザインが際立つ、しなやかな立体作品を新館、本館の両館にてご覧いただけます。ギリシア神話のイメージを背景に持つ作品が多く見受けられ、神秘的な雰囲気が漂っています。
高度な鋳造技術を巧みに操り、ブロンズが醸し出す重厚さ、モチーフのしなやかさを最大限表現された作品の数々を是非ご来廊の上、お楽しみください。
彫刻家渡辺浩二さんは1986年にイタリア ミラノへ渡り、名門ブレラ美術アカデミーに留学。後にミラノから北イタリアに位置しスイス国境にほど近いコモ湖畔の町「エルバ」へと暮らしを移し作品制作を続けました。通算25年間のイタリア滞在の後、2010年に帰国。現在は唐津の古民家をアトリエとし次々に新作を発表する傍ら、京都精華大学芸術学部にて教鞭をとり後進の育成にも力を注いでます。
渡辺浩二 プロフィール
1961年福岡県三井郡大刀洗町生まれ。1986年九州産業大学大学院芸術専攻修了、同年より2010年までイタリアにて制作活動。第8回ラベンナ国際彫刻ビエンナーレ銀賞(イタリア)。第9回ラベンナ国際彫刻ビエンナーレ 特別審査員賞(イタリア)。コモ国際コンクール 大賞(イタリア)。洞爺村国際彫刻ビエンナーレ。風の芸術展ビエンナーレ枕崎。イタリア、ドイツ等で個展、グループ展多数開催。
「風にのって」 ブロンズ 57x22x10.5cm
「風にのって」は、紀元前7000年ごろより始まる古代ギリシア神話を背景にしており、観る人に安らぎを感じさせてくれる作品です。観ているうちに、古代ギリシア発祥の地を優しく包み込むエーゲ海が、さざ波のように思い出されてきました。皆様は何を想像されますか?
「風になって」 ブロンズ 50x36cm
風という、形のないモチーフをブロンズで優美に表現。
渡辺さんならではの技術が光る作品の一つです。
「風の交差点」 ベニヤ板、真鍮、アルミニウム 100x110x12cm
取手のようなアルミの物体は水を表してます。
その物体は回転可能で角度によって作品の表情が変化するユニークな作品です。
渡辺作品の根源にあるテーマは「不安定な社会の中の安定」。この「風の交差点」においてもそのテーマ性が伺えます。真鍮板を塗り、時間をかけて腐食させることで独特の風合いが生まれると渡辺さんは語ります。
↓
拡大写真 アルミニウムで作られた物体
有機的で柔らかそうな形。硬質な素材を使っているのに、不思議ですね。
「anemoi(風)」 ブロンズ 51x16cm
先ほどご紹介しました「風になって」と異なり、風が籠の中に閉じ込められたように思えます。また、たちこめられた風がゆっくりと舞い出しそうな気配を感じられませんか?
「la finestra(窓)」 ブロンズ 21x24cm
イタリアルネサンス芸術を感じる窓枠のデザイン。愛情に満ち、安らぎを感じさせてくれる作品。西洋では梨は愛情を意味します。
展示の様子
右:「テミスの審判」 ブロンズ 215x130x15cm
テミスはギリシア神話に登場する正義と審判の女神です。
左:「トルストイ(信念と矛盾)」 ブロンズ 93x100x13.5cm
皆様もご存知の通りトルストイは帝政ロシア時代を代表する小説家かつ思想家です。トルストイの代表作は「戦争と平和」。渡辺さんはとにかく平和を愛し争いごとのない社会を求め、作品にその願いも込められております。
「三美神」 ブロンズ 1作品 150x30x42cm
3作品で1つの作品です。
イタリアでもアートの表現方法としても作品を吊るすことはめったにないそうです。渡辺さんならではの無限に広がる表現方法を是非画廊で体感してください。
新築の家を建てる前に渡辺さんの作品を選び、それから間取りお決めになるお客様もおいでだそうです。自宅に三美神のような立体作品が堂々飾ることができるのなら、時間の許す限りずっと観ていたい!と想像するだけでも、優雅な気持ちになります。
【三美神とは・・・】
ギリシア神話に登場する三美神はレイア(花のさかり)、エウプロシュネ(喜び)、アグライア(輝く女)という女神。「美」「愛」「貞操」を意味しています。
「equilibrio」 ブロンズ 76x41x14cm
イタリア語で equilibrioは「均衡」を意味します。
均整のとれたブロンズ作品が安らぎと静寂をもたらしてくれます。
ずっしりとした碇のようにもみえ、地中海の海辺の景色が目前に広がってくるかのようです。
「パリスの林檎」 ブロンズ 66x30cm
ギリシア神話の『パリスの審判』というストーリー。美を競い合う女神たちの中からパリスが「最も美しい女神」としてヴィーナスを選び、林檎を手渡した場面はピーテル・パウル・ルーベンスをはじめ画家たちが好んで描いた優美な題材です。
美を象徴するタイトルを冠したこの作品は、素材がブロンズであることを忘れてしまいそうなほどのしなやかさで遠目からも目を引き、近づけば赤い林檎の瑞々しさは匂い立つようです。作品の影が描くシルエットまでもがエレガントであることに気が付いたとき、さらなる深い感動がもたらされることでしょう。
画廊にて異なる角度から作品を余すことなくご鑑賞ください。
【パリスの林檎とは・・・】
ギリシア神話にて海の女神ティティスと英雄ペレウスの結婚式に神々たちが祝福に訪れましたが、争いの女神エリスだけは招かれませんでした。エリスは怒り、神々の集まっているところに「最も美しい女神へ」と書かれた黄金のリンゴを投げ入れました。
自分こそが一番の美女だと思っている三人の女神、最高神ゼウスの正妻であるヘラ、知恵と戦争の女神アテナ、美の女神ヴィーナスは、黄金のリンゴをめぐって大ゲンカ。困ったゼウスは、トロイアの王子パリスに誰が一番美しいかを判定させます。
女神はそれぞれパリスに取引を持ち掛け、ヘラは「ヨーロッパとアジアの王の座」を約束し、アテナは「全ての戦いでの勝利」を、ヴィーナスは「世界一の美女」を与えると言いました。
パリスは世界一の美女を選び、ヴィーナスが勝利しました。ヴィーナスは約束通り、世界一の美女・ヘレネーをパリスに妻として与えますが、実はヘレネ―はスパルタ王メネラーオスの妃。当然メネラーオスは激怒し、ギリシャ王国連合軍をつくり、トロイアへ侵攻。トロイア戦争の勃発となりました。
「パリスの審判 」 ブロンズ 43x25x7cm
「オルフェウスの窓」 ブロンズ 81x62x15.5cm
画廊に新しく窓が設置されたかのような錯覚におちいるこの作品は、来廊されるお客様の足を止めさせ、鑑賞者の内にある風景を映し出すかのようです。見入っていくうちに、ディテールに精密にこだわって作られていることが分かります。空間の演出効果もたっぷりと果たしている存在感のある作品です。
【オルフェウスとは・・・】
ギリシア神話に登場するの竪琴の達人オルフェウスとエウリディケの悲恋の物語。「オルフェウスの窓」という同タイトルの少女漫画もあるように、やはりドラマティックな主題です。その漫画では、主人公が通う学校にある古い窓にまつわる噂があり、その窓に立った男性が階下を見たとき、最初に視界に入った女性と必ず恋に落ちるが、その恋は実らず悲劇に終わると言い伝えられていました。
渡辺さん自ら「オルフェウスの窓」を画廊新館に設営している時の様子。
さらに本館では、比較的小さめの作品を展示。
「mitologia(神話)」 ブロンズ 32.5x32.5x8cm
この作品から皆様は何をイメージしますか?
あるいは時空を超えた神々が降り立ってきたようにも思えるかもしれません。
「雫 」 ブロンズ 37x24.5x5cm
イタリアルネサンスを感じる作品。艶やかではありつつも上品なデザインが印象的です。
本館の展示の様子
ブロンズという素材ながら、重力から解放され、しなやかで優しい表情を湛えた作品の数々を是非画廊にてご覧ください。
本展は、7月18日(祝)まで開催いたしております。
多くの皆様からのご来廊を心よりお待ちいたしております。
渡辺浩二展 風の宮殿
2022年7月18日(月・祝)まで開催中です。
会期中無休 10:00-18:00
会場 みぞえ画廊福岡店(福岡市中央区地行浜1-2-5)
梅雨時期とはいえ晴れ間は夏の気配が漂ってまいりました。
みぞえ画廊福岡店では、オーガベン展 夜の灯り 2022年6月11日(土)〜26日(日)を開催中です。
弊画廊では東京店と合わせて3回目となります。あの時のお名前はオーガフミヒロでしたが、50歳を機にオーガベンと改名されています。
オーガブルーとも呼ばれる深い青は、画家の出身地である瀬戸内海の凪いだ海や空を連想させます。
本展ではタブロー33点、ガラス絵16点、そして書籍の挿絵原画が13点と、充実した展示となりました。
さらに会場の随所には、これまでライフワークのように書き綴っていた散文を詩に仕上げたという原稿をそのまま展示しています。これらの詩は、作品とは直接の関連はありませんが、作家の世界観に別の側面から触れることができるかもしれません。
初日のオープニングイベントでは、これらの詩を読み上げる朗読会が催されました。
前回の個展でもご出演頂いたアコーディオン奏者のyocciさんが、今回も演奏してくださいました。
ご持参いただいた楽器は、なんとオーダーメイドで世界に一つしかないそうです!
開始時間になる頃には、続々とお客様がお集まりくださいました。
一つ一つの文字のかたちを確かめるように、詩を読み上げるオーガさん。
それに呼応するように、yocciさんが演奏するアコーディオンが鳴ります。アコーディオンが空気を沢山取り込んで、少しずつ音に替えてゆく様は、まるで生き物のようでした。
詩を読み上げた後は、アンコールを1曲演奏頂きました。
自身もオーガ作品のファンだというyocciさん。中でも、灯りがともる瞬間を描いた作品に惹かれるのだそうです。
そんな相性抜群のお二人が奏でる、絵画と音楽と詩の協奏、いかがでしたでしょうか。ご参加いただきました皆様、誠にありがとうございました。
イベントの後はご歓談に花が咲きました。
やはりメインはタブローの作品です。
近年は下絵を制作せず、真っ白なキャンバスに絵筆のみで対峙するそうです。
目と手は描くのが一番難しいそうです。二人の人物の手は、この絵の中ではとても小さく描写されています。三日月の存在感が強調され、それによって生まれる絵画の奥行に、鑑賞者が引き込まれます。
一人しかいないように見えるので、タイトルが「ふたり旅」なのはなぜだろう?と思っていました。近寄って人物の表情をよく見ると、振り返って星を見ていることがわかります。きっと、この人物は一人ではなく、星と旅をしているのでしょう。
このように月や星などの天体は、オーガ作品には度々登場します。遠くから誰かを見守る存在であったり、その反対に抱きかかえられていることもあります。
ガラス絵は、近年取り組まれている新しい展開の一つです。
キャンバスに描くタブローとは違った不思議な奥行き。小さい作品ながら覗き込みたくなるようで、あたかも箱庭の楽園を思わせます。
何気なく手元にあったガラスに絵の具を乗せてみると、滑るように筆が動きだしたというこのシリーズ。キャンバスに書くタブローとは制作工程も異なり、筆あたりも違う、この不自由な素材に、画家自身が新鮮な感動を覚えながら制作していることが伝わってきます。
2021年には、書籍の挿絵を担当されました。今回はその原画も展示しています。
『見知らぬ友』マルセロ・ビルマヘール 著、宇野和美 訳、オーガベン(オーガフミヒロ) 絵
児童書のカテゴリですが、大人が読まないのは勿体ない良作です。子供の時に感じていた言葉にできない感情が、オーガさんの挿絵とともに、鮮やかに想いだされました。短編集で読みやすく、寝る前に読むと落ち着くことでしょう。
書籍の横では、オーガ作品をアニメーション化した”オーガ二メーション”を上映中。最後のチャプターでは、こんなことが語られていました。
自分の原風景がどのような形をしているか、どのような物語なのか、明瞭にしたい。そうして、より見る人に自然に寄り添えるような、普遍的な作品が描きたい。(オーガニメーションDVDインタビューより)
誰にも平等に訪れる夜という時間には、それぞれの自由が育まれます。それは幸福の形をしている時もあれば、はたまた涙の形をしているかもしれません。それらはきっと、太古の昔から人間が向き合ってきた心の営みではないでしょうか。
これから行く道を、ただ一人孤独の道と思うか、あらゆるものに迎えられて進むと思うかで、風の向きは変わってくるのかもしれません。
包み込むような、あるいは道を示すような灯りをともす、オーガ作品との出会いをお楽しみください。
オーガベン展 夜の灯り
2022年6月26日(日)まで開催中です。
会期中無休 10:00-18:00
会場 みぞえ画廊福岡店
(福岡市中央区地行浜1-2-5)
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コロナ禍で2回目の個展。林檎の木の下に集まる動物たちを、太陽がやさしく見守る大作を中心に、なんと80点ほどの作品が並びました!
中でも縦の構図が並ぶ3点は対になっており、今回の新作個展のもう一つの見どころとも言えるかもしれません。
満月と富士、あぜ道の日の出、満月昇る海原の道。
油絵具を60層重ねる独特の技法によって、それぞれの時間帯の光が実感をもって表現されています。あるいは、朝陽や月明かりに照らされているような感覚になるのではないでしょうか。
お米粒を一つ一つ書き込むシリーズ今年も炊けました!おにぎりを見ていると唾が出てくるのは梅干しの味を知っている者だけのことでしょうか・・・^^
おにぎりは葉っぱの上に置かれています。地面の上に食べ物を直に置くのはちょっとな、という感覚は、やはり人間だけのものでしょう。
今回初の試み。会期中に弓手さんが九州取材に出かけ、糸島・鹿児島で描き上げたドローイングを描きたてほやほやで展示しました。取材中の詳細は弓手研平さんのブログに書かれていますので、是非ご覧ください!
▼えかきの思考/弓手研平
http://blog.livedoor.jp/k_yunde/archives/2022-05-24.html
http://blog.livedoor.jp/k_yunde/archives/2022-05-27.html
そんな小旅行を経て、初夏の爽やかな天候に恵まれました5月28日、弓手研平さんによるライブドローイングが行われました!
今回のライブドローイングの開始の直前に、「やっぱり桜島を描きます」とおっしゃったことから、糸島を描くか、鹿児島を描くか迷われていたことが伺えました。
「ある程度構図を想定しながら作っておいた下地をみながら、何が見えて来るかな〜とか考えながら決めて行きます。」
下地を準備しておいた紙を手に、誰にでも分かりやすい言葉で説明をしながら・・・・
昨日見てきたばかりの、そしてその場では描くことのできなかった夕景の桜島が、百道の会場に現れてきました。
ドローイングでも土から描くスタイルは変わりません。
ベンガラという赤褐色の顔料は、土を描く段階でよく使用する色の一つです。多くは土に含まれる酸化鉄という素材から作られており、世界中のどこでも採れます。古くはラスコーの壁画にも使われています。
他によく使う画材の一つに、木炭があります。木炭は焼き切った木でできています。
土から得られる画材が重なり、自然の姿に戻っていくようで、なんとも不思議な光景です。
「桜島の火山灰を持ってきました」
嬉しそうに取り出したビニールには、採りたての火山灰が。
これを透明のメディウムと混ぜると、火山灰色の絵の具として生まれ変わります。
弓手さんは、現場取材で制作中に、その現場にある土や水を、絵の具に混ぜることがあり、今回も「桜島の灰を絵に使いたい!」ととても楽しみされていました。
会場で展示中の、桜島を描いた作品には火山灰が、湧水を描いた作品にはその湧水が使用されています。
このイベントの翌日には、ギャラリートークが開催となりました。新館に展示中の、『日本国憲法の心を描く』シリーズ(全110点のうち16点展示中)がトークテーマです。
時は2006年に遡ります。何気なく新聞に目を通していると、『物乞いのいない最貧国』という強烈なキャッチフレーズでブータン王国が幸福度世界一だと紹介する記事を見かけたそうです。ブータンって面白そうやな、行ってみたいなと思っていたそうです。ほぼ同じタイミングで、とある弁護士の方からの依頼が舞い込みます。「憲法を絵に描いてみないか」この一言がきっかけとなりました。今まで誰も取り組んだことのないモチーフ。さらにユニークだったのは、「絶対に法律の勉強をしないで絵を描くこと」という条件が課せられたことでした。「憲法」は幸せになるための方法が書いてあるのではないかとイメージしていたところに、ブータン王国の記事がフラッシュバックし、ブータン王国への取材を決意。当時かなり厳粛であった入国制限をクリアし、ブータンに入国してからの体験は、その後の制作にも多大な影響を与えました。
弓手さんは、ブータンの人々と触れ合ううちに、美しい国土を全国民の財産とし、家族を大切にすることを尊ぶ風土を感じ、その様は、日本人が原風景として思い描く日本そのもののように思われました。
どの作品も圧倒的な密度です。こんな作品を110点も、しかもたったの5年で完成させたこと、やはり驚異的です。ご本人も「人生で一番頑張った」とおっしゃっていること納得の限り。完成から約10年の時を経ての公開となりました。完成するまでは、個展の依頼もすべて断っていたとのこと、感慨深く思われます。このシリーズは、これまで殆ど日の目を見ずに保管されおり、画廊スタッフも初めて目の当たりにするものがほとんどです。いつか110点すべての展示が実現してほしいと願います!
「憲法が幸せになるための方法が書いてあるのだとして、では幸せって何だろう?」
画家としての視点で日本を俯瞰するこれらのシリーズでは、自身のパートナーや子供たち、奈良のお寺などの身近な存在も描かれました。幸せという大きな命題を紐解いていく時に、最も身近なものがいつもと違って見えてくるかもしれません。
田植えをし、穂が垂れて、収穫する。ただそれだけを繰り返す。人の営みの原点、原風景を描き続けてきた画家だからこそ、日常に対する新たな側面を気づかせることができます。
本展にお越しくださいました皆様に、深くお礼申し上げます。
本館
弓手研平展
私たちは土の上で生きている
2022年5月21日(土)〜6月5日(日)
新館
弓手研平展
日本国憲法の心を描く
2022年5月21日(土)〜6月5日(日)
JUGEMテーマ:展覧会
JUGEMテーマ:美術鑑賞
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